2015-12-16

選択型夫婦別姓への道が遠くて悲しい

悲しすぎて筆ならぬキーボードをとりました。

夫婦別姓認めない規定 合憲判断も5人が反対意見(NHKニュース)

女性裁判官は全員が「違憲」意見 夫婦同姓の合憲判決(朝日新聞)


違憲判断(+損害賠償)は難しいだろうとは思っていたけど、15人の裁判官のうち、実際に改姓のめんどくささを実感したであろう女性が3人しかいないというところに日本社会の縮図を思う。

判決をひかえて、ソーシャルメディアにも「夫婦別姓」の文字が飛び交っていた。わたしは「選択型」だったら別にいいじゃん、というかお願いします!と思っているのだが、それでも反対する人が多いことにびっくり…というか、ほとんど悲しい気持ちになった。反対派のよくある主張にわたしの考えを書いておきたい。



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よくある言い分① 家族の絆が壊れる


苗字が同じということがどの程度家族の絆を保つのに役立っているかというところに大きな疑問がある。苗字が離婚への抑止力になるというのなら、これまで同姓だったけど離婚する人が3割いるのはどう説明をつけるんだろう…

そもそも、結婚した時点で離婚はしたくないものだし、それでも離婚に至るにはやっぱりいろんな問題があると思うので、それに対する苗字の因果関係はどうしても見出せないのだった。


よくある言い分② 同じ姓にしたくないなら結婚するな


この主張はとっても新鮮だったし、そういう観点で結婚を捉えたことがなかったのでけっこう考えさせられた。わたしは「この人と一緒に生活するためには結婚という手段が一番合理的」という理由で結婚した。同じ苗字になるのは本当に余計な必須事項なんですが…

これは「結婚=同じ姓を名乗らなければいけない」という決まりに疑問を持たない、とっても優等生的な主張だと思う。


よくある言い分③ 子供の名前はどうするの?きょうだいで名前が違うの、混乱するでしょ


子供がいないわたしが言ってもまったく説得力がないが、社会に夫婦別姓、子供ごとに苗字が違うという状況が広がったら、大した問題じゃなくなるんじゃないかなと思う。大人は事情がよくわかっているし、子供には「両親には生まれたときの苗字があって、それをそのまま使っているだけなんだよ。あなたの苗字はどちらからとったんだよ」と説明すればいいだけのような気がする。その上で、子供がどちらかの苗字にしたいという自覚が芽生えたら、変えられるような制度にしておけばいいんじゃないかなと。

あるときTwitterで、旧姓で仕事をしているという女性が、「子供への影響はないんですか?」と同じく結婚されていて子供がいる女性に質問されていた。その方はおそらく5歳くらいのお嬢さんがいらっしゃるのだが、「子供にはお母さんには結婚前の名前があって、それを仕事で使っていると説明してます。子供もうっすらわかってるみたい」と答えられていた。


よくある言い分④ 一部の人が必要としている制度のために、法律を変える必要なんてあるの?


これも新鮮だった。先進国はマイノリティを受け入れて発展していくものだと思い込んでいたからだ。利便性(?)や多数派の主義主張のために(?なのかな、よくわからない)、マイノリティを切り捨てていい、ってそれこそ憲法で定められている基本的人権の尊重はどうなんだ(今回合憲って言われてたけどね!)。

あと、「法律を変えるのは大変だから、通称でも通る世間を作るのが先決」という意見もきたのだが、これは鶏と卵だと思う。そんな世間を作るのにはやっぱり法律が変わってくれないとめんどくさい、というのが苗字を変えなきゃいけないという社会的圧力の下に置かれることが多い、いち女性の意見である。


よくある言い分⑤ 名前だけで仕事してるのか?それこそ周囲に説明すればいいじゃん


以前、「結婚して名前が変わったと言ったら、まわりはみんな祝福してくれた。不便を感じません。だから夫婦別姓はいらない」というある女性政治家の主張を見たとき、絶望を覚えた。いや、結婚した、って報告したらふつう祝福するでしょう…

もちろんできる範囲の周囲には説明している、というか、通称は旧姓だけど、公的書類は新姓です、とあらゆる場面で説明せざるを得ない。が、結婚したときはいいけど、不幸にも離婚することになったらまたもや説明しないといけない。そのとき自分がいやな思いをするのはもちろん、周囲の人だって、ちょっと申し訳ない気分になるんじゃないだろうか。離婚に至るまでの決断は当人にはつらいものだし、それを無神経にほじくり返すようなことするの、気まずい。

ここで、「離婚を前提にするなんて家族の絆を考えてなくてけしからん」という声が聞こえてきましたが、上にも書いたとおり、離婚したくて結婚する人なんていないし、離婚には相応の理由がある。そのときのダメージを減らすように法整備をすることは意味があることなんじゃないだろうか。(そもそも結婚でももろもろの事務処理とかのダメージがあるわけだが…)


よくある言い分⑥ 本人確認に支障が出る。犯罪捜査とかどうするの?


マイナンバー&戸籍謄本があるじゃないですかー☆ 苗字が同じだからというのは確かに一定の歯止めにはなるけど、現状でもサトウとかスズキとかたくさんいる苗字の場合はどうなんだ、という気がしないでもない。あと犯罪捜査については、日本の警察と最新の科学捜査はそんなにザルじゃないと信じている。

ちなみにわたし、パスポートは旧姓表記をしていて基本的に日常では旧姓を使っているんだけど、日系の飛行機に乗ると、隣に座っている夫と予約時の苗字が違うので、「ご一緒じゃないですよね?」とよく言われる。これ自体は大したことではないけど、こういう「思い込み」も、「別姓の夫婦がいる」という認識が広がればなくなっていくと思う。


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結婚して相手の名前になることに幸せを覚える人がいるのも確かだし、そういう人はそういう道をこれからも選べばいいと思う。だからこそ「選択できるようにしよう!」と言っているわけである。

最高裁は「国会で議論してね」と言ったわけだけど、今の超保守な国会じゃ無理だろうな…と未来を悲観してしまう。しかし、「保守」って、過去を守って、未来はどうするつもりなんだろうね。いつも疑問だ。

渋谷区あたりが「夫婦別姓証明書」を出してくれたりしないかな、と希望の光をむりやり見出して生きていきたい。



追記1:
友人のアメリカ人、カナダ人女子にこのニュースを送ったら、
「はあ?なんで?」
「(アメリカ人女子がこの記事を見つけて)保守派が家族の絆が壊れるって言ってるらしいよ…」
とドン引きされました。

追記2:
さらにこのニュースを見かけた友人のスペイン人女子からは「大丈夫!将来はきっとよくなるから元気出して!」となぐさめられました。スペインの双方の苗字をくっつけて使う方式いいよなあ。あれもお父さん方のやつが残っていくシステムだけど、まったく消えちゃうよりずっとましよねえ。