2014-03-29

幻のベトナム料理、「ミコー」を探して3649里

パリからニューヨークの距離は3649マイルだ。(United)

先日、ふらりと出かけたパリで(過去記事)、現地に住む友人が教えてくれた、あるベトナム料理が超おいしかったのである。
その名はミコー(Mi Kho)。乾燥エビの入ったさくさくのかき揚げにたっぷりサラダが乗ったあったかい汁なし麺で、どんぶりの底のお醤油ベースのたれを混ぜながらいただく。

ううう…なんですかこの素晴らしいは食べ物はー!
麺類を食べるときの「野菜があんまり食べられない」および「途中で飽きてしまう」という点を解決する素晴らしいメニュー。
本当においしくて、
「ニューヨークには世界各国の料理屋さんがあるから、帰ったあともミコーを出すお店を探して食べに行こう」
と食べながら心に誓った。
あ、ちなみにお店はこちらです。
Mai Lam Saigon (Yelp)

パリから帰ってきて、ニューアークに着いて携帯の電源を入れた瞬間、ニューヨークのミコー事情を捜索開始。
Twitterで教えてもらったのだが、ミコーとは、
mi = 卵麺
kho = 乾燥した、干した
という意味らしい。こんなのがすぐわかっちゃうTwitterすごい。ありがとうございます。

「mi kho vietnamese」でぐぐったら、かなり近いものを発見。

野菜いっぱいだし、エビのかき揚げっていうか天ぷら?いやえびせん?が乗っかったこれはかなり近いのでは!
お店はどこだー!と早速場所を探してみる。

ど、どこなの…?
住所にVAと書いてあったので、どうやらヴァージニア州らしい。マンハッタンから250マイルくらいあるんですけど…
興味のある方はこちらなのでどうぞ。
Hai Ky Mi Gia (Yelp)

気を取り直して捜索を継続する。今度は検索ワードに「NYC」と入れるのを忘れない。
すると、わたしと同じようにニューヨークでミコーを求めている人がいた。さらにお店の名前が出ているではないか!

Vietnamese Mi Kho Noodle Dish in NYC? (CHOW)
I haven't been here in quite a while and am not even sure if it's still around, but they did have a decent version of this dish at pho thanh hong restaurant in chinatown (called mi bo kho on the menu, and has stewed beef chunks with cilantro on top, and egg noodles).

Pho Thanh Hong
30 E Broadway, New York 10002
good luck!
いえーい!あなたのおかげでGood luckつかんじゃったよありがとう!
さすがニューヨーク。簡単に見つけてしまった。さっそくお店の名前でぐぐる。
………(検索中)………
見つからない。なんかバンクーバーとラスベガスに同じ名前のお店があるようなんだけど、ニューヨークでは出てこない。
よく見ると質問は2003年のものだし、競争が激しいニューヨークではなくなっていても不思議ではない。Googleストリートビューで見てみる。

…………銀行になっていた。
食べるという人間の三大欲求のひとつが、現代の行き過ぎた資本主義に敗北したようで、ぐうたら食いしんぼうのわたしとしては非常に遺憾である。

この時代にインターネット(Google先生)で見つからないということは、もう存在が危ういのではないだろうか。次回のパリまで食べられないなんて耐えられないーーうわーーーん。
半ば絶望的な気持ちになっている中、このお店を発見したときは、ニューヨーク行きのバスが来ないことも忘れるほどの感動だった。

87 Baxter St, New York, NY 10013

メニューに燦然と輝く「L39 A. Mi Bo Kho」の文字。
Boは牛肉のこと。牛肉そんなに好きじゃないけど、ニューヨークに帰ってきてしまったこの期に及んで背に腹は代えられない。

あいにくの雨模様の中、さっそく行ってみた。

地下鉄のCanal駅から降りてすぐ 、Baxter Stというチャイナタウンのはずれに、そのお店はあった。

ついに来た…!マチュピチュに到着したときにも匹敵する興奮が胸の奥からわき上がって来る。


ZAGATや、日系メディアのデイリーサンも紹介しているよーと掲げられていた。

ベトナム料理 NHA TRANG ONEの「フォー」(デイリーサン ニューヨーク)

ちがいます!わたしたちはフォーを求めてきたんじゃありません!
あんなちゃらちゃらした誰からも愛されるセンター的人気者じゃなくて、知る人ぞ知るっぽい、わたし的推しメンならぬ推し麺のミコーを求めてきたんです!
…はー。フォーも大好きなのだが、ミコーを求める気持ちがちょっと暴走した。

お店の中は結構賑わっている。大勢で来ているグループも、ひとりで来ている人も結構いて、人種を問わず人気のようだった。


メニューを渡される。脇目も振らずにMi=卵麺のページを探す。

…………あれ?求めていたMi Bo Khoがない。
ウェブサイトだと、「L39A」と書いてあったけど、そんなものが存在しない。
ま、まさか。嫌な予感がする。オーダーを取りにきた店員さんに聞いてみる。

わたし「あのー、ミコーはないんですか?」(携帯でウェブサイトを見せながら)
店員さん「ああ、ミコーはありません」

がーーーーーーん!!!
雨の中チャイナタウンまで来ることが、ぐうたらなわたしにどれだけハードルが高かったことか…

おなかがぺこぺこなので気を取り直して、それっぽいものを頼んでみることにした。
「L39. Mi Xao Bo Cai」というのが気になる。「干○麺」とか「Dry」って書いてあるし、ミコーに近いんじゃないだろうか。
どういうものですか?と聞いてみたら、「蒸し麺をいためたもの」という話だったので、一縷の望みをかけて、それをお願いしてみた。

……………
全然ミコーじゃない…
牛肉ともやしとトマトとからし菜のような野菜をいためたものが細めの卵麺にのっかっている。
失望を隠せないが、ひとくち、口へ運ぶ。
あれ、この麺おいしい。パリで食べたのより細いけど、ちゃんとアルデンテで(とパスタ以外のものに使うかはわからないが)、ぷちぷちした歯ごたえがやみつき。
たれはかかってなかったけど、牛肉から出た肉汁がほどよく甘じょっぱくておいしい。
写真ではわからないけど、トマトが牛肉と油のしつこさをうまく中和してくれていて、口直しになる。
ミコーじゃないけどなかなかいいかも。これが7ドルというのも嬉しい。

生春巻も2本で4ドルと破格。
この小さなおたまは生春巻のソース用??と思って使ってしまったのだが、

スープ用でした…

思わぬおいしいものが食べられて満足だったが、第1期ミコー捜索隊の任務はまんまと失敗したのであった。
第2期の活躍に期待したい。

教訓:ニューヨークだからと言ってなんでも食べられるわけではありません。

◆◆◆

(2014/4/26 追記)
続編書きました!
『続・幻のベトナム料理、「ミコー」を探して3649里』

2014-03-28

のんびりパリ週末

パリへ行ってきた!
もう何回目だろうか。初めてその地を踏んだ2007年以来、結構な頻度で行っている場所である。

パリといえばそのおしゃれさとグルメっぷりで全世界の女子のみならず男子の心もがっつりつかんでいる花の都だが、わたしの場合、『ベルサイユのばら』と『のだめカンタービレ』のおかげで行きたくなって、実際行ってみたらまんまとはまって、そこからフランス語を勉強して…なんて歴史はちょっと秘密にしておきたい恥部である。

ちなみにわたしの夫は『マスターキートン』を読んでロンドンに憧れて、留学して…という歴史の持ち主なので、なんとも似た者夫婦と言えよう。
好きなことへの情熱ってすごい。


マリーアントワネット様が投獄されていたコンシュルジュリーとか、

のだめと千秋先輩が住んでいたアパルトマンのロードオブザリング門とか、以前も見たことがあるのだが、改めて夫と一緒に復習した。
ロードオブザリング門、7年ほど前に見たときは原作の通り真っ赤だったのに、茶色く塗られていた。

今回、パリへ行ってみて、自分がだいぶニューヨークの生活に染まっているんだなあということを感じた。
主に以下の4点である。

--------

1. 入国審査が超ゆるい
アメリカに来てから嫌いになり、トラウマとなったもの。それが入国審査!
どこの空港でもあまりいい思い出がない。
マイアミでは早朝4時に到着してから寝不足のまま2時間待たされ、DCでは1時間45分待たされて乗継便に乗り遅れ、JFKでは1時間半待たされたあげく、「今回は通してやるけど、常にVisaの書類もってろや」と舌打ちされ、ああ、もういやです…
こんな経験から、Passport Controlと見ると緊張で身体が固くなってしまうわたしだが、シャルルドゴール空港での入国審査の行列のところで「待ち時間:4分」という表示がされていたときには驚いた。
この行列なのに4分??というのもあるが、フランスなのに、待ち時間表示とかしてる!!!という点にびっくりである。(ステレオタイプですみません)
いぶかしげに並んでいたのだが、まんまと4分くらいで順番がやってきたのである。係の人に「ボンジュール」と言ったら、別に何も聞かれずにスタンプをがちゃん!と押された。
…いいのかこれで。いいか別に。日本のパスポートの信頼度万歳ということにしておこう。
ともあれ、アメリカの自意識過剰っぷりを再確認したのであった。気持ちはわかるけど、どう見ても人畜無害なただの薄い顔の日本人(わたし)を詰問するのはやめてほしい…


2. ブランドものを持っている人が少ない。服装が地味。
以前も書いたが、わたしがニューヨークに引っ越してびっくりしたことのひとつに、フルメイク・ブランドものを持って街を歩く女性が多いという点があげられる。(過去記事) 
街行く人のブランドの取り入れ方は日本とあまり変わらない。すっかりヴィトンのバッグを持ってモンクレールのダウンを着ているというような人の格好に見慣れてしまったのだが、そんな人はパリにはなかなかいないのであった。
また、ニューヨークみたいに、ゴールドや鮮やかな色をふんだんに使った格好をしている人があまりいない。ピンヒールを鳴り響かせて闊歩する人もいないし、スーツ&ネクタイで決めた男性も少ないような気がした。


3. 買い物はマイバッグがふつう
スーパーで買い物をしたとき、「袋いる?」と聞かれて、ヨーロッパ各地でのマイバッグ普及度を思い出した。
ニューヨークでは、頼まないとビニール袋に物をぼんぼん放り込まれる。さらに、ビニール袋の強度がしょぼいからということもあるだろうが、袋を2重にされることもある。やめてーー!資源がーーー!
ある日、日系スーパーで袋を2重にするのを断ったら、いろいろ理由をつけられて、聞き入れてもらえなかったこともある。レジの人、日本人なのにーーーー。わたしの心に息づく「もったいない精神」がずきずきと痛む。
ちょっと前にサンフランシスコへ行ったとき、「レジ袋いる?」と聞かれてびっくりしたので、これはアメリカというよりニューヨーク、もしくはマンハッタンの問題かもしれない。MOTTAINAIは世界を救うんだよ…!!


4. 時間の流れがゆっくり
ニューヨークに比べるとパリは時間の流れがゆるい。
時間の流れがゆるい場所は東南アジアとか南米とかたくさんあるのだが、なんというかパリは都会の余裕をかんじさせるゆるさである。
たとえば食事のとき、ニューヨークだとレストランに入った瞬間から店員さんが進行状況を逐一確認して、なんとか回転率を上げようと苦心している様子が見受けられる。
しかしパリでは、まずあまり店員さんが来ないし、その結果、オーダーを伝えるのに20分くらいかかったりする。(たぶんこれがいやだという人も多くいるだろう)
食事をした後もコーヒーや飲み物が下げられることはないし、下げたとしても改めて言わないとお会計を持ってこない。結果、4時間とか5時間とか平気で居座れてしまう。
あるビストロで食事をしたとき、店員さんがまかないを食べて、お店の掃除も始めたのに、お会計をせかされなかったのはびっくりした。

--------


ともあれ、アメリカはマーケティングで大衆の心を惑わせて、大量消費させて、無理矢理にでも経済成長させている感がある。
パリにももちろんマーケティングはあるだろう。メトロには広告がいっぱいだし。でもどこか、
「経済成長よりも、毎日おいしいご飯がまったり食べられればいいよね」
みたいな余裕を感じるのであった。

そんなパリだが、ゆっくりIT化の波が押し寄せているのかなあ、という気がしないでもない。
そのひとつに、メトロの駅で、以前はなかったこんなものを発見。

iPadを模した巨大な電光掲示板!?
ボタンのところをよく見てみると…

パリ交通公団(RATP = Régie Autonome des Transports Parisiens)のマーク…
おちゃめっていうか、なんか訴えられたら負けそうなんですけど大丈夫ですか、と余計な心配をするいちパリファン。
ちなみに、ニューヨークや東京にあふれるデジタルサイネージだが、パリではまだ数が少ないように感じる。
うまく書き表せないのだが、町にある看板はロール式の一定時間おきにぐるっと回って正面に出る広告が変わるタイプのものが中心だった。
(どなたか、英語でも日本語でもフランス語でも、あの看板の名前をご存知でしたら教えてください)

また、ルーブル美術館にも、IT化の波が到達していた。

美術館のガイドをしてくれる3DSソフトである。
ハードコアゲーマーの夫はもちろんマイ本体を持参してソフトを購入したが、3DSを持っていない人は本体ごと5ユーロで借りられる。


館内の道案内をしてくれるし、作品の前に来ると近接したことを感知して音声ガイドが案内される。
ちなみにこれはフランス王家の戴冠式で使われた剣だそうだ。ベルばらの世界…!!
Coronation sword and scabbard of the Kings of France(Louvre)


ゆっくり進む時間と、のんびりIT化する町はなかなか居心地がよさそう、とかニューヨークの行き過ぎた資本原理主義に疲れたぐうたらサラリーマンのわたしは思ってしまうのだが、フランスの若者は比較的安い税金と仕事を求めてロンドンへ向かっている、という記事があった。

Vive Londres! (Newsweek)

they are attracted by the benefits of a less regulated economy, more relaxed labor laws, a more meritocratic society, a lively business networking scene, a large pool of professional talent, and easier access to investment capital. And all this only a two-hour Eurostar train ride from London to Paris, making it easy to stay in touch with family and friends.
It is being billed as the biggest French invasion since William the Conqueror arrived in 1066.
記事では、フランスは雇用関連の法律が厳しい上に税金が高く、何かを始めるためにはコネクションが必要な社会なので、新しいビジネスをやるのなら絶対ロンドン!という気持ちの若者を紹介している。EU内なので特別な申請はいらないし、ユーロスターで2時間で行き来できるし、フランスの家族や友人との関係も維持したまま、チャレンジができるところがうけているのだろう。
ロンドンに住んでいるフランス人は30万人から40万人、それに対してパリに住んでいるイギリス人が8500人、というあたりでも、一方的な流入具合が見てとれる。

今回パリで会ったイタリア在住の友達が、
「イタリアは老後に住むならいいけど、この居心地の良さに慣れてしまうと、ほかの場所へ行けなくなる。若いうちにチャレンジした方がいいのかもしれない」
というようなことを言っていたのだが、これはフランスにも言えることではないだろうか。
確かに悩みどころである。隠居したかのように、のんびりしててご飯がおいしいところで住みたいと思うのは、30代ではまだ早いのだろうか?しかし、毎日ぎらぎらせかせかした社会にいるのは疲れる。もうこうなったら別荘…?とかありえない妄想だけが広がる。

悩みは尽きないが、いろいろ試行錯誤して、そのとき自分がやりたいことをきちんと考えて、そのための努力は惜しまないことなのかなあ、という気がしたのであった。

ともあれ、今は、バゲットが食べたい。



2014-03-09

MoMA 『A Collection of Ideas』展へ行ってきた(25ドル払いました)

ニューヨーク近代美術館、MoMAで新しい展示が始まったというので行くことにした。
展示名は「A Collection of Ideas」。3階のはじっこに設置されており、美しく機能的に標準となったデザインだけでなく、新しいイノベーションのカテゴリーやデザインの形を導入したものも展示している、とのことである。

展示の入口にある表示は星座を模したムービーで超すてきだ。

入ってすぐのところにあった巨大な展示。
むむ、これ、よく見る気がする…Google Mapsのピンだ!
ちなみにGoogleからの寄贈と書いてあった。MoMAのサイトで見ると、デジタルデータでもらったと書いてあるので、印刷して貼付けたのかなあ。
解説:Google Map Pin (MoMA)

壁にぺたっと貼られていたアットマーク。イノベーションとデザインを兼ね備えているといえば確かにそうである…
すぐ横にあった解説いわく、アットマークの起源には6世紀からラテン語で使われてたとか、16世紀にヴェネチアで使われてたとか、諸説あるそうだ。
MoMAでは2010年にアットマークをコレクションに加えたとのことである。紹介している記事のタイトルがウィットに富んでいる。
ところで、無精わたくし、恥ずかしながら@が英語だと「at sign」というのを今日知りました…
記事:@ at MoMA (MoMA)

どこの駐車場でも見かける、車椅子とか身体が不自由な人のスペースを示す看板。
ステレオタイプなこの看板のイメージを変えよう!ということで、アーティスト3人が取り組んだプロジェクトだそうだ。
目のつけどころがおもしろいなーと思うと同時に、躍動感溢れる車椅子のデザインが元気になれそうで楽しい。
解説:Accessible Icon Project (MoMA)

写真だとまったく伝わらないけど、プロジェクターで壁に映し出された草。
ゆらゆらとゆれて、屋内にいながらにして風まで感じられる作品。癒しだーーと思いきや、なんと光量や風速を感知するセンサーがつけられていて、それに応じて成長したり、種を落としたりするらしい。すごい。
解説:Lightweeds (MoMA)

この展示をするにあたり、MoMAは8つのゲームを新たにコレクションに加えたそうだ。解説いわく、インタラクションデザインの重要度が増しているからとのことである。

ストリートファイター2。ちゃんとプレイできる。
必殺技が出せなくて夫に負けた…としょんぼりしていたら、コアゲーマーの夫「このコントローラー、特設のものだから操作しづらい」という評価をしていた。ちっ。
紹介:Hyper Street Fighter 2 (MoMA)

テトリス。白黒だし、なんだか動きもかくかくしている!
素晴らしいシステムを基本として、操作性とゲーム性が磨かれて今に残っているんだなあと思った。
ソ連の教育機関で生まれたという由来は知らなかった。
解説:Tetris (MoMA)

パックマン。初めてやってみたけど、奥深そうでなかなかおもしろい。
横にはパックマンのコードを可視化した図が掲げられていた。
解説:Pac-Man (MoMA)
解説:Distellamap (Pac-Man) (MoMA)

こちらはシムシティ。確かにこのゲームのアイディア、デザインは革新的である。
自分がはまっているからだが、わたしは社会の授業の教材としてシムシティを取り入れたらどうかなあ、と思っている。都市は絶妙なバランスの上に成り立っていて、まちづくりには絶対に正しい答えがないということがわかるからだ。人が多い都市は税収が多いけど渋滞やら上下水道、犯罪増加等の問題が起こりやすい。人が少ない都市はとにかくお金がなくて、何をするのも苦しくて、どんどん人が離れていく…あれ、これはもしかしてわたしが下手だからですか!
ちなみにアメリカの学校ではシムシティを学校教育に使うという動きがもう出てきているようだ。(SimCity EDU)
解説:SimCity 2000 (MoMA)

他の展示もとても楽しかった。来年の1月までやっているので、もう1回くらい行きたい。

ところでMoMAは金曜日の16時以降は無料である(過去記事)。
これまで幾度か、無料時間帯を狙って行っていたのだが、人ごみにもまれて疲れるので短時間で引き上げてしまっていた。
今回はゆっくり見たいと思ったので、ひとり25ドルのチケットを買って入ったのだが、日曜日にも限らず人がそこまで多くなくて、「これは払う価値があるかもな」と思ったのだった。

ところで、MoMAといえば、以前読んだこの本!
MoMAのキュレーターと、日本のある美術館の監視員のアンリ・ルソーの絵画を巡る推理と駆け引きがすごくおもしろかった。


表紙にも使われていて、作中で重要な役割を果たす作品、『夢』は、もちろんMoMAに置いてある。

絵の前に立って、思わず暗号が仕込まれているんじゃ…!?と探してしまう楽しみは、『ダヴィンチコード』を読んだあとにフランスやイギリスの教会できょろきょろしてしまうのと似ている。

ともあれ、こんな風に、ひとつひとつの作品をじっくり楽しみたい方には、ちょっと高いような気がするけど、25ドル払って入ることをおすすめしたいなあと思ったのであった。


◆◆◆◆◆◆

過去の関連記事

2014-03-08

『失恋ショコラティエ』の女性キャラへ勝手にアドバイス

ここ数年、漫画を買うのは控えていた。というか、触れることすら遠ざかっていた。
理由はこんなかんじである。

  • 冊数が多くなりがちで収納スペースがとられる
  • シリーズ全巻を最初から一気に買うのはためらわれる
  • おもしろかった場合、ちょっとずつ続きを買いに行くのがめんどくさい

これらの問題を解決してしまうKindleが手元に来てからというもの、漫画を読む量が一気に増えた。

買う。
 ↓
読む。
 ↓
おもしろい。
 ↓
読み終わる。
 ↓
「○○(作者名)の本をもっと見る」
「この本を買った人はこんな商品も買っています」
 ↓
当然続編を選ぶ。
 ↓
「1-Clickで今すぐ買う」
 ↓
読む
 ↓
(以下略)

ということで、本日はすばらしきマンガ+Kindleのコンビネーションで読んだこの漫画を紹介したい。ネタバレがありますのでお気をつけください。

 

ドラマが話題になっているというのを見て、気になって買ったところ、最新刊まで一気に読んでしまったああ。
様々な登場人物が繰り広げる恋愛模様は、打算や欲望にまみれていてあまりきれいなものではないが、それだけにリアリティーを感じさせるし、人とのつながりとか、生きていくことについて考えさせられる。
わたしは女なので、つい、女性の登場人物に注目して読んでしまう!ということで、おせっかいなおばちゃんの視点から、主要女性キャラクター4人へ勝手にアドバイスしたい。
ついに現実と漫画の世界がごっちゃになったか…と思われた読者のみなさん。だいじょうぶです。結構前からです。あと、ドラマは見ていないので、ご承知おきください。



サエコ
主人公爽太の恋慕する相手。現実の世界でもたまに見かける恋愛至上主義者。しかも自分が好きになるのではなく、相手から好きになってもらって満足して、それこそ男から男へと渡り歩くたちの悪いタイプである。
憧れる人も多そうな裕福な専業主婦だが、典型的な亭主関白の夫に顧みられることもなく、友達とも疎遠になりつつあり(というか、こういう人って女友達いなそうなんだけどどうなんだろ?)、孤独感を覚えるシーンがいくつか書かれている。
働きたいと言っても夫は許可してくれないし、母親には、「働くって言ったってあなたの能力で何ができるの」とか言われてしまう彼女に同情する面もなきにしもあらず。
彼女の悲劇や屈折した「恋愛」への考え方は、ひたすらモテスキルだけを磨き抜いた末路という気がしない。
あたし…爽太くんに あたしのこと好きになって欲しいって本気で思います
他の女の子も周りにたくさんいると思うけど
がんばってあたしのこと一番好きになってもらおうって
それが「本気で好き」ってことですよね?
これは行き過ぎた想像だが、こういう人物が渡り鳥をやめるのは子供ができた瞬間なんじゃないかな。
『NANA』『新エロイーズ』でも、女性は子供ができたことをきっかけに恋人との関係性だけでなく、自分のあり方をがらっと変える。(このふたつを並列に並べるのはどうかと…) できちゃった婚の人たちもそうだ。
こんなタイトルをつけておいてなんだが、サエコにアドバイスすることはない。恋愛より楽しいことがいっぱいあるよーと言っても彼女の趣味で生き甲斐だから「ない」と言われそうだし、人を傷つけるのはよくないんだよーって言っても無邪気に「何がいけないんですか?」って返されていらっとしそうだからだ。…ってここまで考えちゃうわたし、さすがにちょっと妄想がやばい。
主要人物の中ではまだまだ語られていない部分が多い気がするので、これからもっと心の深いところが見えてくるのかなあと思うと、救いを期待すると同時に、見るのが恐ろしい気持ちにもなる。

えれな
主人公の爽太のよき理解者で、どんなことも話せる明るく屈託のない性格。モデルで美人だし、人のことを悪く言わない(ように心がけている)。女なら誰でも憧れてしまうような子で、友達にしたい子、幸せになってほしい子ナンバーワンである。
えれなの存在は、「男と女の友情」とか、「好き」とか、「つきあう」とかってどういうことなんだろう、という疑問をつきつけてくる。
…それを怒れるような立場じゃなかったんだよあたしは
だって彼女でもなんでもなかったんだもん (中略)
爽太くんにとってのあたしの価値は爽太くんが決めることだもん
あたしが文句言う資格はないよ (中略)
……ちゃんと付き合ってたら上手くいってたかもね
でも現実には付き合ってなかったし
なんにも始まってなかったってことだよ
不倫をしている人が言いそうな台詞だな…と書いていて思った。
人との関係で、自分がどれだけ関わっていいのかってなかなか難しい。友達にはなんでも言えるのに、恋人には口をつぐんでしまう、ということはよくあることのような気がする。
これは、友達という関係はそうそう壊れないけど、恋愛関係っていう状態は壊れてしまって修復できない可能性があるからじゃないかなあと思う。でも、恋人だったり、配偶者だったりと関係を続けていくには、自分の考えていることを伝えて、その上でどうしていくかをふたりで考えていく必要があるとわたしは考えている。
えれなにはぜひ、いい子から少し脱皮して、「自分がどうしたいのか」をぶつけるところから何かを見出してほしい。しかしなにぶんいい子なので、「どうしたい」=「我慢すること」になりそうでおばちゃんはひやひやである。

薫子
仕事が好きで、恋愛下手で、いろいろあきらめている風を装っている主人公の同僚の薫子さんは、わたしの周りでは最も多くの人からの共感を集めている。
わたしも他人とは思えない…サエコのような恋愛至上主義者に対して、軽蔑のまなざしを送ってしまう気持ち、わかりすぎるーーーーすみませんーーーー。
恋愛を生活の中心に置くのはいやだけど、するからにはまじめでありたい、と思いつつ、真逆の生き方をしているサエコとの交流を通して、恋愛ができないのは自分が努力をしていないからなのか?と自問自答する姿はなかなか見応えがある。
人間は お菓子?
あたしが全然売れないのは当たり前の努力をしてないせいなの?
飾ったり、おすすめアピールしなきゃ興味もってくれないお客さんに
「わかってない」とか怒ってイラついてる方が間違ってるってこと?
薫子さんの悩みは難しい…モテ路線への妥協は必要なのか?ということだと思うが、もし薫子さんにそう聞かれたら、わたしは「必要ない」と答えたいと思う。
恋愛も結婚もタイミングが重要だし、「ばかばかしいな」と思いながら相手を「落とす」のはなんだか相手に失礼な気がする。
あと、薫子さんはどこか「恋愛はしなきゃいけないもの」って思っているような気がするけど、「恋愛はしてもいいもの」であって、人生の必要条件ではないんだよーというのも言ってあげたい。だから、恋愛してなくても人間失格みたいに思わなくていいんじゃないか。
いずれにしても、薫子さんには恋愛面でも仕事面でも、もやもやせずに「これでいく!」という自分の道を貫いてほしい気がする。彼女が満足する道を見つけてほしいなあと思わせるキャラクターだ。

まつり
主人公の妹で大学生のまつりは、「正しい自分でありたい」気持ちが強くて、自分の欲求の優先順位が低い。
二股をかけられていた友達の彼氏と別れて主人公の同僚のオリヴィエに押し切られてつきあっているのだが、端々からなんとなく冷めた雰囲気が伝わって来る。
だから好きだって言ってるじゃん
正しいと思うから付き合ってる
正しいことをしていると信じている人は、自信をみなぎらせている。他人から攻撃されるところがないと思っているからだろうか。弱点がないボスキャラみたいなかんじ。だからそうありたいと思う人は多いのだろう。わたしもできれば「正しく」ありたいと思う。
しかし、正しいってなんだろう?そのルールを決めているのは何だろう?そして、恋愛とは、「正しいか正しくないか」だけで制御できるものなのだろうか?というのを、正しくなさそうな恋愛をしている主人公の対比から強く訴えてくる。
正しい恋愛、なんて問いにはきっと答えがない。まつりちゃんには、いっぱい失敗をしながら自分の恋愛を見つけてほしいなあと思う。



ところで、この漫画を読んで、何か似たような話を読んだことがあるなあと思ったんだけど、『モテキ』だ!

男の主人公がひとりでぐるぐる考えて、相手に伝えないで自爆する様とか、周囲の女がその姿を見てやきもきするのとか、似たような構成じゃないだろうか。

恋愛の場合に限らず、他人とのコミュニケーションって難しいものだ。
自分の気持ちを伝えることをためらってしまうのは、相手の反応が怖いからなのだろう。でも、溜め込むといつかその反動で自分が壊れてしまう。
友達や恋人との関係を強固なものにするという目的だけでなく、自分の心を平静に保つためには、怖くても、自分の気持ちを表現していくことが大事だな、ということを再確認した。

2014-03-02

レ・ミゼラブル初日プレビュー公演を観てきた!

先日、3月1日、レ・ミゼラブルのブロードウェイの初日公演へ行ってきた!
1987年初演のこのミュージカル、ロングランで2008年に閉幕した後、6年ぶりのブロードウェイ公演だそうだ。今回の公演には映画の成功が大きく寄与しているらしい。(NYT記事)
恥ずかしながらどんな話かもあまり知らなかったのだが、『ベルサイユのばら』つながりで、マリー・アントワネット様以降のフランスの歴史が大好きなわたしは、映画をきっかけに案の定はまり、去年の10月にチケットが売り出された瞬間に買ったのだった。
半年も前だったので、チケットが添付されてるメールを探すのが大変だった…

ミュージカル素人のわたしはこのチケットを買うときに知ったのだが、正式な公演が始まる前に2〜3週間プレビュー公演というものがあるらしい。
プレビュー公演は、いわばお客さんの前でやるリハーサルのようなもので、お客さんの反応を見て、制作者が演出だったり台本を変更するそうだ。
わたしたちが今回見たのもこのプレビューだった。
小ネタだけど、レ・ミゼラブルのことを英語だと「les miz」と略す。日本語の「レミゼ」という略し方に近いかもしれない。

会場はImperial Theatretという劇場で、席はオーケストラ(1F)の一番うしろ。意外と小さい劇場でびっくり。
ちなみにチケットはひとり140ドルくらいだった。

キャストはこちら。タイピングがめんどくさいので写真ですみません…
以前マンマミーアを観に行ったとき、主役が代役の人でちょっと残念だったのだが、今回はさすが初日だからか、ばっちりスタメン(?)。(過去記事)

なんせミュージカル素人なので批評めいたことはできないのだが、ヴァルジャン役のラミン・カリムルーが本当にすごかった。
調べてみるとまだ35歳らしいのだが、ヴァルジャンらしい貫禄があるし、強さを前面に出したシーンから、苦悩する老人のシーンまで、迫真の歌とパフォーマンスが心を打つ。
あと、わたしはアンジョルラス役とエポニーヌ役の人がかっこよくて釘付けだった。
アンジョルラスは原作を考えるとちょっとイメージが違うかな?という配役だけど、仲間を率いる勇猛な姿がすてきだし、迫力がある。
彼の横にいるとへたれキャラ・マリユスがますますへたれに見える…いやこれは演出だ!と思うことにした。(キャスト一覧はこちらでどうぞ)

演出といえば、背景の使い方がおもしろい。特にジャヴェールの最期のシーンは意表をつかれた。プレビューなので本公演では変わってしまうかもしれないが。
満員の客席は、テナルディエやガブローシュのコミカルな演技に笑い声を上げたり、開始数分から泣いてる人もいたり、という感じ。
もちろん、終わると同時に立ち上がって拍手喝采。
…3月24日からの本公演も観に行こうと心に誓ったのであった。

あまりに感動したので、思わず会場でCDを買った。30ドル。25周年公演のものらしい。
買った直後に夫がぼそりと「Amazonで買ったらもっと安いのに…」と言った。

1967円ですか……
さすがに「やっちまった」感がただよう価格差である。

いいんです。素晴らしいミュージカルの感動の余韻を買ったんです。ヘビーローテーションで聞きまくってテンションを上げるんだもん。
「でもLook Down聞いてたら元気なくなりそうだよね」
と夫にすかさずつっこまれたのだった。


 
うぐぐ、映画のDVDですら、2180円だった…
振り返らずに生きていきたいと思います。


(2014/4/7 追記)
公式ムービーもいいのですが、朝のTV番組に出演したときの動画がそれぞれの表情がはっきり見て取れてとても良かったので貼っておきます。アンジョルラスとエポニーヌがやっぱり素敵…!


(2014/5/8 追記)
すっかりラミンさんのとりこになってしまったわたしですが、おなじようにラミンファンのみなさんが代役で悲しまないように、こんなニュースを張っておきます。

Les Miz Star Ramin Karimloo Will Not Perform Thursday Evenings Beginning April 3; Rush Tix Policy Announced (Playbill)

ということで、ラミンさんは当面、木曜日の夜は出ていないようです。
で、ラミンさんがお休みのときに何をしているかと言うと…


別の舞台を観てるのであった…
※ちなみに一緒に映ってるのはロンドンのオペラ座の怪人でクリスティーヌ役で共演したシエラ・ボーゲス!たまらんツーショットであります。
どちらにしても、ブロードウェイでラミンさんに会えるかも!?

この記事もにやにやものなのでどうぞ!

"Who Am I?": Broadway's Newest Leading Man, Ramin Karimloo, On His Journey to Starring in Les Misérables (Playbill)

ああ、ミュージカル沼が見える…